芋掘長者
2005年勘三郎襲名公演で三津五郎が45年ぶりに復活させた作品とかで、観た記憶はあるのですが三津五郎しか覚えていません。調べたら相手役の治六郎は橋之助、緑御前は亀治郎(現猿之助)でした。えーーー、観たかった〜観たんだけど。ブログを書くと記録だけでなく自分の記憶にも残るので、これからは歌舞伎に限らず観たり聴いたりしたものはブログに残そうと強く思ったのでした。その時の橋之助のコメント「芋掘長者で困るのは僕の治六郎の方が踊りがうまいという設定です」。確かに。
今回は芋掘藤五郎が橋之助、治六郎が巳之助です。なんか今月はそんなのばっかだな……。
踊りの名手の三津五郎が見よう見まねで踊るのが面白かったので(それだけは覚えている)、橋之助はそういう踊りではありませんでした。巳之助も踊りが上手いようには見えなかったし。それはそれとして、とても楽しい舞台でした。
緑御前は七之助。七之助がやる美しく浮き世離れしたお姫様は大好きです。腰元の新悟も可愛かったです。
橋之助と巳之助の組み合わせも新鮮で、他に国生、鶴松と納涼ならではの若々しい舞台でした。私は年配者が娘役とかやるのは苦手なので、とても楽しめました。
演目自体も面白いし、なぜ45年もの長きに亘り上演されなかったのか不思議です。勧進帳とか河内山を減らしていいから、こういうのをもっとやってください、松竹さん。
祇園恋づくし
江戸の指物師留五郎(勘九郎)が京都三条の茶道具屋大津屋に滞在中に起こる喜劇。大津屋主人次郎八と女房お次は扇雀二役です。
元となる歌舞伎作品はあるものの木幡欣也が新たに書き下ろした1997年南座が初演とか。その時の主人公が鴈治郎(現坂田藤十郎)と勘三郎で、今回息子と孫がそれぞれを演じていました。おつぎの妹おその役の虎之介が病気で休演のため、おそのは鶴松でしたが、虎之介だと実の親子が姉妹を演じることになるわけで、それだと感情移入しにくい私には鶴丸の方が楽しめました。
なんて、こんなことを言っていたら歌舞伎なんて観られなくなっちゃうんだけど。
舞台が京都なので当然ですがノリが関西で、コテコテのベタな笑いが可笑しくて、最初から最後まで笑っていました。
中でも巳之助扮する手代文吉が最高。
留五郎はおそのに一目惚れ、そのおそのから親に内緒で自分を江戸に連れて行って欲しいと懇願され、二人で駆け落ちかと早合点するも、おそのにはちゃんと思い人がいて、それが文吉です。
親の決めた結婚から逃れるために、愛する文吉と江戸へ、ということなのですが──
文吉、なよなよしすぎ、キモ可愛すぎ。文吉が喋るとその場がどよーんと冗長になり、「変」が舞台を支配して、そのたびに可笑しくて吹いていました。
そのキモいぶっ飛んだ演技を見て、三津五郎の息子だ!と思いました。
というのも。三津五郎は何を演じても絵になる人でしたが、私は「大江戸りびんぐでっど」のお侍とか、納涼歌舞伎の「舌切雀」の小人みたいな、いっちゃってる感ありあり、ふりきり感ありありの役も大好きだったんです。
あんなに癖のある演技、というより癖になる演技は二度と見られないのかと思っていたら、いました、巳之助!
巳之助ってリズム感はすごく良いのに役になりきれないというのか、時々素が見えてしまうことがあり、イマイチ安心して見ていられない役者さんだったのですが、今回の文吉は違いました。これからが楽しみ〜。
扇雀の二役はどちらもはまっていました。扇雀はこういうちょっとヒステリックな女房とか腹に一物ある役、いいですね。
八月はどれも面白かったけど、三部が一番楽しかったです。
来年の納涼も楽しみです!