2015/08/27

八月納涼歌舞伎 第三部

芋掘長者

2005年勘三郎襲名公演で三津五郎が45年ぶりに復活させた作品とかで、観た記憶はあるのですが三津五郎しか覚えていません。調べたら相手役の治六郎は橋之助、緑御前は亀治郎(現猿之助)でした。えーーー、観たかった〜観たんだけど。ブログを書くと記録だけでなく自分の記憶にも残るので、これからは歌舞伎に限らず観たり聴いたりしたものはブログに残そうと強く思ったのでした。

その時の橋之助のコメント「芋掘長者で困るのは僕の治六郎の方が踊りがうまいという設定です」。確かに。

今回は芋掘藤五郎が橋之助、治六郎が巳之助です。なんか今月はそんなのばっかだな……。
踊りの名手の三津五郎が見よう見まねで踊るのが面白かったので(それだけは覚えている)、橋之助はそういう踊りではありませんでした。巳之助も踊りが上手いようには見えなかったし。それはそれとして、とても楽しい舞台でした。
緑御前は七之助。七之助がやる美しく浮き世離れしたお姫様は大好きです。腰元の新悟も可愛かったです。
橋之助と巳之助の組み合わせも新鮮で、他に国生、鶴松と納涼ならではの若々しい舞台でした。私は年配者が娘役とかやるのは苦手なので、とても楽しめました。

演目自体も面白いし、なぜ45年もの長きに亘り上演されなかったのか不思議です。勧進帳とか河内山を減らしていいから、こういうのをもっとやってください、松竹さん。

祇園恋づくし

江戸の指物師留五郎(勘九郎)が京都三条の茶道具屋大津屋に滞在中に起こる喜劇。大津屋主人次郎八と女房お次は扇雀二役です。
元となる歌舞伎作品はあるものの木幡欣也が新たに書き下ろした1997年南座が初演とか。その時の主人公が鴈治郎(現坂田藤十郎)と勘三郎で、今回息子と孫がそれぞれを演じていました。おつぎの妹おその役の虎之介が病気で休演のため、おそのは鶴松でしたが、虎之介だと実の親子が姉妹を演じることになるわけで、それだと感情移入しにくい私には鶴丸の方が楽しめました。
なんて、こんなことを言っていたら歌舞伎なんて観られなくなっちゃうんだけど。

舞台が京都なので当然ですがノリが関西で、コテコテのベタな笑いが可笑しくて、最初から最後まで笑っていました。
中でも巳之助扮する手代文吉が最高。
留五郎はおそのに一目惚れ、そのおそのから親に内緒で自分を江戸に連れて行って欲しいと懇願され、二人で駆け落ちかと早合点するも、おそのにはちゃんと思い人がいて、それが文吉です。
親の決めた結婚から逃れるために、愛する文吉と江戸へ、ということなのですが──

文吉、なよなよしすぎ、キモ可愛すぎ。文吉が喋るとその場がどよーんと冗長になり、「変」が舞台を支配して、そのたびに可笑しくて吹いていました。

そのキモいぶっ飛んだ演技を見て、三津五郎の息子だ!と思いました。
というのも。三津五郎は何を演じても絵になる人でしたが、私は「大江戸りびんぐでっど」のお侍とか、納涼歌舞伎の「舌切雀」の小人みたいな、いっちゃってる感ありあり、ふりきり感ありありの役も大好きだったんです。
あんなに癖のある演技、というより癖になる演技は二度と見られないのかと思っていたら、いました、巳之助!
巳之助ってリズム感はすごく良いのに役になりきれないというのか、時々素が見えてしまうことがあり、イマイチ安心して見ていられない役者さんだったのですが、今回の文吉は違いました。これからが楽しみ〜。

扇雀の二役はどちらもはまっていました。扇雀はこういうちょっとヒステリックな女房とか腹に一物ある役、いいですね。

八月はどれも面白かったけど、三部が一番楽しかったです。
来年の納涼も楽しみです!

2015/08/19

八月納涼歌舞伎 第二部

ひらかな盛衰記 逆櫓

初めて観る演目で、当日ちらしだけを頼りに見ていたせいか、よくわかりませんでした。私は予習は一切しないので(敢えてしないわけではなく面倒なのと、まだ観ぬお芝居に興味がないから)初めての時代物は、特に歌舞伎座の場合は見取り狂言が多いので、ハードルかなり高めです。
通しで観ると、えーこういうことだったんだーと思うことが多々あります。歌舞伎座でも、もっと通し上演をやって欲しいです。ただし忠臣蔵を除く。
橋之助ファンなので、橋之助が見られただけで嬉しいです。ただ少々力みすぎ?なんか最近迷走中の気がします。
というわけであまり感想のない逆櫓でした。

京人形

左甚五郎(勘九郎)が郭で見た太夫を忘れられず、そっくりの人形を彫ったら魂が宿り──という話。お人形さんのような七之助が人形役です。七之助は魂のこもっていない役をやらせたら絶品の気がします。(褒め言葉です)
人形は、最初は甚五郎の魂がこもっているという設定で動きが男で、困った甚五郎が太夫の落とした鏡を人形の懐に入れると、人形は女の動きをします。
七之助は人間とも人形振りとも違う不思議な動きで男女を自然に演じ分け、お見事でした。美しく着飾った花魁が男の動きをすると、本当に違和感ありました。

女房おとく(新悟)が甚五郎に請われ仲居さんをやるんです。女房なのに、勘九郎と七之助の中に入ると本当に仲居さんのように見えました(ごめんなさい)。

後半は突然、甚五郎が家に匿っていた娘が実はどこぞの大切な姫で、という展開になり追っ手が現れ立ち回りが始まります。
それも5分くらいバタバタして幕となるので、後半はいらないんじゃあないかと思いました。なぜ人形だけのファンタジーにしなかったんだろう。

2015/08/11

八月納涼歌舞伎 第一部

おちくぼ物語

初めて観る演目です。見目麗しく心も美しい先妻の姫が継母とその娘たちに虐められ、最後は幸せになるというシンデレラのようなお話。平安時代の「落窪物語」を題材にしたとかで、題名は聞いたことありましたがストーリーは初めて知りました。いつの時代でもどこの国の好む話は同じなのねと、なんか妙に納得。

美しく健気で浮き世離れしたおちくぼの君を七之助、おちくぼと結ばれる都で評判の貴公子左近少将を隼人が演じました。
おちくぼは七之助のイメージそのもののだし隼人はイケメンだし、美男美女のカップルは物語世界そのものでしたが、姉さん女房感は否めませんでした。
巳之助と新悟の夫婦が新鮮で良い感じでした。二人とも若いのに上手いですねー。
巳之助が故三津五郎に似てきて驚きました。友人Rちゃんも同じ事を言っていたので気のせいではないでしょう。
写真でしか知りませんが、巳之助の祖父(9代目)と父親(10代目)は笑っちゃうくらい同じ顔しているのに、巳之助は顔の傾向が違うんだなあと思っていたのですが、ふとした時に見せる仕草や表情が三津五郎に似ていてドキッとしました。嬉しくも切ない、切なくも嬉しい、どっちなんだろ。

棒しばり

勘三郎が亡くなった後に三津五郎と勘九郎が演じ、今度は勘九郎と巳之助だなんて、ちょっと早すぎ……。
高坏もそうでしたが、勘三郎って凄かったんだとつくづく感じる一幕でした。勘三郎は歌舞伎とか舞踊を超えて、最高級のエンターテイメントだったんだなあ、と。
別に比べるつもりはないんだけど、どうしても比べてしまいます。
とは言っても、とても楽しい舞台でした。今後が楽しみ。